国際的なRFID技術「RAIN RFID」とは?

RFIDの国際的な規格統一を促進するための企業提携団体およびその技術としてRAIN RFIDがあります。RAIN RFIDが存在することで、UHF帯パッシブ型RFIDにおいてメーカーや国境を越えた活用の幅が広がり、双方向の取引がスムーズに行えるようになっています。
本記事では、RAIN RFIDの特徴、役割、メリット、注意点などを解説します。

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RFIDの主要な国際規格

RFIDには、各国やメーカー間での互換性を担保するために国際規格が存在します。
以下では、RFIDの主要な国際規格をご紹介します。

ISO/IEC 18000シリーズの概要

ISO/IEC 18000シリーズは、RFIDの周波数帯ごとに通信方式を定めた国際規格であり、広く採用されています。周波数帯ごとに細分化されており、主に以下の種類があります。

・ISO/IEC 18000-2:135kHz以下(低周波、LF)
・ISO/IEC 18000-3:13.56MHz(高周波、HF)
・ISO/IEC 18000-6:860〜960MHz(超高周波、UHF)
・ISO/IEC 18000-7:433.92MHz(アクティブRFID)

なお、ISO(国際標準化機構)は国際的な標準を策定し、製品や貿易の品質向上に寄与する非営利の国際標準化団体であり、IEC(国際電気標準会議)も非営利の国際標準化団体です。

EPCglobal規格とは

EPCglobalは、世界共通で物品を識別・追跡するために設計されたRFIDの標準仕様群および運用枠組みを指します。UHF帯RFIDを中心とした国際規格であり、国際的なバーコード標準化団体であるGS1の傘下組織として運営されています。

EPCとは各個体(製品・資産)に付与される固有の識別コードであり、RFタグに記録されます。代表的な規格としては、「EPCglobal Class 1 Gen2」が挙げられます。
バーコードが「商品種別レベル」を識別するのに対し、EPCは「個々の製品」を識別できる点が特徴です。

RAIN RFIDとは

RAIN RFIDは、RFIDの国際規格の中でも特に重要なUHF帯パッシブ型RFIDに関する国際的な業界団体およびその技術の通称です。
RAIN RFIDは規格名を指すものではなく、 UHF帯パッシブ型RFID技術の標準化および普及を目指した業界団体であり、ブランド名でもあります。
本章では、その目的や特徴、規格としての役割などを詳しく解説します。

RAIN RFIDの目的と特徴

RAIN RFIDは、RFIDによって「モノのインターネット(IoT)」を実現することを目的の一つとしています。Wi-FiやBluetoothと同様に国際的に統一された規格を設定することで、国境を越えた製品の識別や位置特定などを容易にし、双方向的な取引をスムーズに行うことを目指しています。
なお、RAINは「RAdio frequency IdentificatioN」の略です。

クラウド接続を標準化したアプローチを推進しており、RFタグのデータをインターネット経由で管理できる点が特徴です。電池を内蔵しないRFタグ(パッシブタグ)にRFIDリーダライタから送信される電波を利用してデータ通信を行うため、低コスト・長寿命・メンテナンス不要といった利点もあります。

UHF帯パッシブ型RFID規格としての役割

RAIN RFIDは、国際規格のISO/IEC 18000-63およびEPCglobal Class 1 Gen2に準拠しています。UHF帯パッシブ型RFID(860〜960MHz)の通信方式やコマンド体系を定めた世界標準であり、現在広く使われているRFID方式です。
数メートルから十メートル程度の通信距離を実現し、複数のRFタグの同時読み取りも可能です。そのため、物流・製造・小売・航空など、広範な業界で活用されており、トレーサビリティや在庫管理、入出荷の自動化などに役立っています。

ただし、UHF RFIDのすべてがRAIN RFIDのプロトコルに従っているわけではありません。例えば、UHF RFIDはパッシブタグ以外にもアクティブタグ、セミパッシブタグに対応しており、さまざまな独自規格にも準拠しています。
パッシブタグ、アクティブタグ、セミパッシブタグの違いについては以下の記事で解説しています。

他の規格との違い

RFIDには周波数帯や用途によって複数の規格がありますが、RAIN RFIDはその中でもUHF帯の国際標準技術を指します。

RAIN RFID(UHF帯)と他規格との主な違いは以下の通りです。

RAIN RFIDのメリット

RAIN RFIDには以下のメリットがあります。

グローバルスタンダードとしての利点

前述の通り、RAIN RFIDはISO/IEC 18000-63およびEPCglobal Class 1 Gen2という国際規格に準拠しており、世界中で共通の仕様として利用可能です。これにより、メーカーや国が異なっても同じ規格のRFタグとRFIDリーダライタを共通運用できます。

グローバルスタンダードであるため、以下のようなメリットを得られます。

・国際互換性と規模の経済による低コスト化
各国で同一仕様のRFタグ・RFIDリーダライタが製造・販売されているため、導入コストを抑えやすい利点があります。また世界標準として採用されているため、RFタグや機器の大量生産が進んでおり、価格が安定しています。

・グローバルなサプライチェーンに対応
海外の工場や流通拠点でも同じ規格で読み取り・管理できます。企業間でRFタグ情報を標準化してデータ共有することも可能です。

・将来的な継続性と信頼性
ISOをはじめ国際標準化団体が維持管理しているため、長期運用にも安心です。

相互運用性の確保

RAIN RFIDのもう一つの強みは、高い相互運用性です。これは、異なるメーカーや国の機器・システム間でもスムーズに連携できるということであり、以下のような利点をもたらします。

・異なるベンダー製品間での互換性
各社が同じ通信プロトコル(ISO/IEC 18000-63)を採用しているため、メーカーを問わずRFタグとRFIDリーダライタの通信が可能です。

・システム拡張・入れ替えが容易
特定のメーカーに依存せず、新しい機器やソフトウェアを柔軟に導入可能です。

・多様な業界・現場への適用
倉庫、製造、店舗、航空、医療など、異なる業界・現場でも同一規格で運用できます。

RAIN RFIDの注意点

RAIN RFIDには前述のようなメリットがある一方で、以下の点に注意する必要があります。

日本での周波数規制との整合を取る必要がある

RAIN RFIDはUHF帯(860〜960MHz)を利用する国際規格ですが、国や地域によって利用可能な周波数帯が異なります。日本では主に920MHz帯が使用されており、米国(902〜928MHz)や欧州(865〜868MHz)とは一致しません。
そのため、同じ国際規格でも、日本の電波法に適合しない機器は使用できない場合があります。例えば、周波数が切り替えられない機器や、出力が日本の上限を超えるもの、LBT(Listen Before Talk)非対応のもの、あるいは技術基準適合証明(技適)を取得していない製品などが該当します。

このような理由から、海外製のRFID機器を導入する際には、日本の仕様に対応しているかを慎重に確認することが不可欠です。確認方法としては、単に仕様書を読むだけでなく、次のような具体的な手順を踏みます。

まず、データシートで「Japan」や「920MHz」対応が明記されているか、技適マークや出力上限が国内基準内かを確認します。次に、設定画面やソフトウェアでリージョン設定を「JP」に変更できるか、LBT機能やチャネル設定が日本仕様に合っているかを実機で確認します。最後に、スペクトラムアナライザなどを使って実際の送信周波数と出力が規制内に収まっているかを確認し、現地環境で正常に動作することを検証します。

このように段階的な確認を行うことで、海外製機器であっても日本の電波規制に適合させ、安全かつ合法的に運用できます。

既存システムとの互換性を確認する必要がある

RAIN RFIDは既存のバーコードシステムやHF帯RFIDなど、異なる規格を用いたシステムと連携する場合には、データ形式や通信プロトコルの違いにより互換性問題が発生する可能性があります。
導入前に、ミドルウェアやデータベース構造を含めたシステム全体の整合性を確認することが重要です。

認証を取得する必要がある

日本国内でRFID機器を使用するためには、総務省の技術基準に適合していることを証明する「技適マーク(技術基準適合証明)」を取得済みの、国内の電波法(920MHz帯)に準拠した機器を正しく選定する必要があります。未認証機器の使用は電波法違反となるおそれがあります。
認証を確認することで、安全かつ法的に適正な運用が可能となります。

RFIDの導入は小林クリエイトにお任せください

RAIN RFIDは国際的に通用する共通技術基盤であり、メーカーや国境を越えてつながるオープンなRFID環境を実現する仕組みといえます。
前章で解説した注意点や他の規格との違いなどを把握した上で、適切に導入・運用しましょう。

小林クリエイトでは、製造業の現場改善で培ったノウハウを活用し、貴社に最適なRFID製品の運用サポートを行っています。
課題の抽出から導入効果の検討、RFタグの選定・システム構築、テスト、本導入まで一貫して対応可能です。

※RFタグの海外対応も可能ですが、その際には使用する周波数帯域と現地の法規制に適合した、グローバル展開しているメーカーのマルチリージョン対応製品の選定が重要です。RFIDリーダライタをはじめとする機器類についても、現地の法規制に詳しい専門コンサルタントやメーカーのグローバル対応窓口を通じて導入を進めることが推奨されます。

以下の資料ではRFIDリーダライタやRFタグの種類を一覧でご案内していますので、RFID導入にご関心のある方はぜひご覧ください。

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