RFIDの読み取り精度を高める方法とは?
影響する要素も解説

RFIDは複数のRFタグの情報を一括で読み取ることができ、生産性向上に寄与しますが、距離や角度などを考慮し、使用環境に適した製品を使用しないと読み取り精度が低下することがあります。特に金属や液体のある環境、高温環境などでは注意が必要です。
本記事では、RFIDの読み取り精度に影響する要素や精度が低下するケース、読み取り精度を高める方法を解説します。

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RFIDの読み取り精度に影響する要素

RFIDの読み取り精度は、以下の4つの要素によって大きく左右されます。

距離

RFタグとRFIDリーダライタの距離が短いほど電波の減衰が少なくなり、精度が向上しますが、距離が長くなると電波が弱まり、精度が低下します。
RFタグにはパッシブタグ、アクティブタグなどの種類がありますが、特にパッシブタグは通信距離が短く、数cm~数m程度が一般的です。一方、アクティブタグは電源を内蔵しているため、数十m以上の通信が可能です。
通信距離は、RFIDリーダライタの電波出力を調整することで最適化できます。例えば、近距離では出力を弱め、長距離では強めることで精度の改善が可能です。

RFIDの通信距離については以下の記事で解説しています。

角度

最も高い読み取り精度を得られるのは、RFタグとRFIDリーダライタのアンテナが平行な位置関係にある場合です。
一方で、RFタグの角度がRFIDリーダライタに対して大きく傾くと、通信距離や精度が低下します。特に直線偏波アンテナを使用する場合、RFタグの向きが合っていないと読み取り性能が著しく落ちることがあります。
円偏波アンテナを使用すると、RFタグの方向に関係なく広い角度で安定した読み取りが可能です。ただし、読み取り距離は直線偏波アンテナより短い傾向があります。

RFIDアンテナについては以下の記事をご覧ください。

使用環境

使用環境も読み取り精度に影響を及ぼす要素です。
例えば金属は電波を反射し、液体は吸収する性質があります。これらが近くにあると読み取りが阻害されやすくなり、精度が低下します。また、極端に高温・低温の環境では、RFタグの性能が劣化する可能性があります。

高温環境でのRFID活用については以下の記事で解説しています。

電波干渉

RFIDは電波を利用するため、周囲の電波干渉が精度に影響します。
他のRFIDシステムやWi-Fi、Bluetooth、電子レンジなどが同じ周波数帯を使用している場合、干渉が発生します。近接して設置されたRFIDリーダライタ同士が干渉することで、通信性能が低下する場合もあります。

RFIDの読み取り精度が低下するケース

RFIDの読み取り精度が低下するケースとして、主に以下の4つが挙げられます。

複数のRFタグの同時読み取り

多数のRFタグが同時に電波を応答すると、電波同士が干渉して読み取りエラーが発生する場合があります。これは「RFタグの衝突(コリジョン)」による競合や、反射波による「マルチパス干渉」と呼ばれる現象です。これにより正確なデータ取得ができなかったり、読み取りの抜け漏れが発生したりすることがあります。
UHF帯のRFIDには、複数のRFタグを同時に識別する「アンチコリジョン機能」が備わっているものもあります。ただし、読み取り範囲内に大量のRFタグが存在すると、読み取り時間が長くなったり、一部のRFタグを取りこぼしたりすることがあります。

移動している対象物の読み取り

RFタグが高速で移動している場合、RFIDリーダライタのアンテナの電波が照射される時間が短くなり、通信が不安定になりがちです。これによりデータの読み取りが不完全になることがあります。
特に高速で移動するコンベアや車両、フォークリフトなどでは、RFIDリーダライタとRFタグの位置関係が瞬間的に変化することで、読み取りに支障が生じやすくなります。

金属製品の読み取り

金属は電波を反射する性質があり、RFタグとRFIDリーダライタ間の通信を妨げます。金属面に直接RFタグを貼り付けると、電波が反射・遮蔽されてRFIDリーダライタに届かず、読み取りが困難になります。
UHF帯は特に影響を受けやすいため注意が必要です。

RFIDの金属干渉については以下の記事で解説しています。

液体のある環境での読み取り

液体はRFIDの電波を吸収・減衰させる性質があり、RFタグとRFIDリーダライタ間の通信を妨げます。特に水分を多く含む物質(飲料、食品、人体など)が近くにあると、電波が吸収されて届きにくくなるため、読み取り精度が低下します。
とりわけUHF帯は波長が短く、液体による吸収の影響を受けやすいため、液体を扱う環境ではRFタグの貼り付け位置や向き、間隔の工夫が必要です。

RFIDの読み取り精度を高める方法

RFIDの読み取り精度を向上させるためには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

最適なRFタグの選定方法

RFタグの選定は、使用環境や対象物に応じて慎重に行う必要があります。
例えば金属や液体など、電波を反射・吸収しやすい素材が近くにある場合には、専用のRFタグ(例: 金属対応RFタグ)を使用すると効果的です。プラスチックや段ボールなどの非導体素材では、一般的なRFタグで高いパフォーマンスを確保できます。
高温・高湿度などの過酷な環境では、耐久性の高い特殊RFタグ(例: 高温対応RFタグ、防水RFタグ)を選定します。

・使用環境や対象物ごとの適したRFタグ

使用環境や対象物ごとの適したRFタグ

また、読み取り範囲とサイズのバランスも重要です。長距離通信が必要な場合はアンテナ面積の広い大きめのRFタグ、小型アイテムには取り付けやすい超小型RFタグを選ぶと良いでしょう。ただし、小型のRFタグは読み取り距離が短くなる傾向があるため、用途に応じた選定が必要となります。

・タグサイズと読み取り範囲

タグサイズと読み取り範囲

以下の記事では、使用環境別に最適なRFタグを解説しているので併せてご覧ください。

アンテナの配置テクニック

アンテナの配置はRFIDシステムの性能を左右する重要な要素であるため、よく検討する必要があります。
アンテナとRFタグを平行に配置することで、最適な通信が可能となります。角度がずれると通信距離や精度が低下するため、RFタグの通過ラインとアンテナの中心を一致させることが望ましいです。
広いエリアや死角をカバーするために、複数のアンテナを設置する方法もあります。ただし、アンテナ間の干渉を防ぐためチャネル(周波数チャネル)の調整が必要です。

アンテナの種類も検討事項の一つです。
円偏波アンテナはRFタグの向きに依存せず広い範囲をカバーできますが、通信距離は短い傾向があります。直線偏波アンテナは通信距離が長いものの、RFタグの向きを揃えないと精度が低下するので、用途に応じて使い分けると良いでしょう。

出力調整とフィルタリング設定

RFIDリーダライタの電波出力が強いほど通信距離は長くなりますが、出力が強すぎると不要なRFタグまで読み取ってしまい、誤読や混信の原因になります。一方、出力を弱めると他のRFタグへの干渉を避けられますが、弱すぎると読み取り漏れが発生します。そのため、用途に応じて適切な出力レベルを設定することが重要です。

RSSI(受信信号強度)のフィルタリング設定を行い、弱い信号を除外することで不要なRFタグの読み取りを防ぐ方法もあります。これにより、信頼性の高い通信が可能となります。

RSSIについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

RFIDの導入・読み取り精度検証は小林クリエイト

RFIDは通信距離や角度、電波干渉の有無などによって読み取り精度が左右されるほか、複数のRFタグや金属などがある環境では精度が低下することがあります。
アンテナの配置の工夫やRFIDリーダライタの出力とフィルタリング調整なども行いながら、現場の環境や用途に応じて適切なものを選定することが重要です。

小林クリエイトでは、製造業の現場改善で培ったノウハウを活用し、貴社に最適なRFIDソリューションをご提案できます。
例えば、RFID運用のスモールスタートに最適なソリューションとして「RF Starter」があります。RF StarterはExcel運用のまま手軽にRFIDを導入でき、わずか3ステップで導入が可能です。テンプレートを利用することで、低コストでRFIDを導入でき、初期投資を抑えつつ段階的に運用を拡大できます。

以下の資料では、RF Starterの特徴や活用例などを詳しく解説していますので、ご興味のある方はご覧ください。

また、こちらの資料ではRFIDの導入で失敗しないためのポイントをまとめています。併せてご覧ください。

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