多品種少量生産のメリットと課題とは?
業務効率化の方法と事例を紹介

同じ工場内で多種多様な製品を少量ずつ生産する手法である「多品種少量生産」。多様なニーズに応えることができ、過剰な在庫を抱えるリスクを低減できるというメリットがあります。一方で、生産効率の低下やコスト増加といった課題の発生につながりやすいという側面もあります。本記事では、多品種少量生産のメリットやよくある課題、また業務効率化を行う方法などを解説します。

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多品種少量生産とは

多品種少量生産とは、デザインや機能面などが異なる製品を同一工場で少量ずつ生産する手法のことです。顧客のニーズや事前の需要予測を基に、必要な生産量を算定した上で生産します。現在では自動車や食品、産業機械、アパレルなど多くの業界で導入されています。

従来の製造業では、少ない種類の製品を大量に生産する「少品種大量生産」が主流でした。しかし、グローバル化によって顧客の選択肢が増え、ニーズが多様化してきたことから、これまでの少品種大量生産では対応が難しくなってきました。そこで、顧客のニーズに細かく対応できる多品種少量生産の必要性が高まっています。

また、多品種少量生産は「インダストリー4.0」や「マスカスタマイゼーション」の考え方が普及してきたことでも重要性が増してきています。インダストリー4.0とは、IT技術を活用して工場のデジタル化や自動化を目指す取り組みのことです。これを実現することで、マスカスタマイゼーション、すなわち多量の製品を効率的かつ低コストで生産しながら、顧客のニーズにも柔軟に応えられることが期待されています。

多品種少量生産は、このインダストリー4.0と、その先のマスカスタマイゼーションを実現する第一歩として位置付けられています。

多品種少量生産のメリット

多品種少量生産を実現する主なメリットとしては以下の2つがあります。

多様な顧客ニーズに対応できる

1つ目のメリットは、機能やデザインといった顧客のニーズに柔軟かつ迅速に対応できることです。多品種少量生産は、製品の仕様や生産量などが受注ごとに異なる「個別受注生産」で行われることが多くあります。これは、個別受注生産では特定のターゲット層が必要とする特注品を小ロットで生産する場合があるためです。
個別受注生産において多品種少量生産を行う場合、生産プロセスは複雑になりやすいですが、顧客の要望に沿った製品を必要な数量だけ生産するため、顧客満足度の向上やコスト削減にも寄与します。

在庫過多のリスクを低減できる

2つ目は、在庫過多のリスクを低減できる点です。大量生産の場合は、受注数が予想に達しなかった場合、多くの在庫を抱えるリスクがあり、保管や廃棄のコストが余分にかかってしまうデメリットがあります。
一方で、多品種少量生産は1つの製品を大量生産するのではなく、顧客のニーズや市場での需要に応じて生産していくため、在庫が過剰になるリスクを抑えることができます。

多品種少量生産の課題

多品種少量生産は上記のようなメリットがある一方で、課題もいくつか存在します。

生産効率の低下

少品種大量生産であれば生産プロセスの変更が少なく単純であるため、高い生産性を実現しやすいです。しかし、多品種少量生産では、製品に合わせて生産プロセスを切り替えることも多く、現場業務が複雑化しやすい特徴があります。特に、生産ラインの切り替えを行う場合は、段取り替えの際にラインを停止しなければならないため、更なる生産効率の低下を招いてしまうことがあります。

コストの増加

多種多様な製品を生産するためには、それぞれの製品に適した多くの種類の原材料や部品などを個別に仕入れる必要があります。そのため、大量生産における大規模な仕入に比べると原価が高くなりやすいことも課題です。
また、各製品に合わせた生産ラインの設計や開発、設備の導入なども必要になるため、それを実現させるための初期投資のコストも増加します。

生産計画の調整が必要

多品種少量生産では、必要な原材料や部品、資材などの種類が多くなるため、生産ラインが複雑になります。また、各製品の需要予測も個別に行う必要があるため、生産計画の調整が難しくなる課題もあります。生産ラインの切り替えが必要な場合に時間がかかると工程が後ろ倒しになるため、リードタイムが長くなってしまう可能性があることには注意が必要です。

作業者の多能工化が必要

少品種の生産に比べ必要な工数やノウハウが増えるため、作業者は多くの知識やスキルを身に付けなければならず、多能工化が求められます。その結果、作業員の育成コストの増加や慣れない作業による生産性の低下などの問題も生じやすくなります。

このように、多品種少量生産では上記のような課題が発生しやすいですが、これらは「業務の効率性」を高めることで解決に近づきます。そこで以下では、多品種少量生産において効率化を進めるポイントをご紹介します。

多品種少量生産の効率性を高める方法

多品種少量生産の効率化を目指したい場合は、以下の方法で効率を高めることができます。

段取りの最適化

段取りの最適化により、生産効率の向上や製造コストの削減が見込めます。製造現場の段取りには、機械を動かしながらでも実施できる「外段取り」、機械・作業を止めて実施する「内段取り」、金型・治具・工具などモノを探すことを指す「ムダな段取り」の3つがあります。内段取りを可能な限り外段取りに変更し、ムダな段取りをなるべく減らすといった最適化が重要です。

以下の記事では現場のムダな段取りの原因や改善方法、段取り最適化を実現するサービスを詳しく解説しています。

また、多品種少量生産の製造現場で求められる「人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)」という4つのMを変更・管理(4M変更管理)することで、製造工程を最適化することも重要です。4M変更については以下の記事で詳しく解説しています。

在庫数量の適正化

在庫数量を適正化することで、過剰在庫による保管料の増加や廃棄コストを低減でき、業務効率化と生産性向上を実現できます。適正化のためには、在庫や保管場所に番号やIDを振り分けて在庫を把握する「ロケーション管理」や、優先して管理すべき在庫はどれかを分析する「ABC分析」、入庫する在庫と出荷する在庫を記録する「入出庫管理」といった方法が効果的です。

在庫管理の方法やポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。

生産実績のみえる化

製造工程ごとに使用した材料や生産した製品の個数、製造にかかった時間などの「生産実績」をみえる化することで、実際の生産能力に基づいた生産計画を立てられるようになります。それによって、生産計画の改善や業務の最適化を行うことが可能になります。
また、各工程の状況を常に把握できるようになるため、多品種少量生産の現場でも特定の作業が遅れているといった課題を見つけやすくなり、改善策を立てることができるのもメリットです。

このように、多品種少量生産の課題は、対策を行うことで解消に近づきます。次章では、特にみえる化に取り組んだことで効率的な生産を実現した事例をご紹介します。

生産実績のみえる化で
効率的な生産を実現した事例

ある製造工場では、仕掛品の在庫管理が煩雑であったため、受注の増減が生じた際に、仕掛在庫が山積みになったり不足したりする状況が発生していました。そこで成形時に出力される製品ラベルを利用した生産実績システムを導入し、仕掛品の生産実績を照会できる仕組みを構築。これによって生産数や合格数、修正数を把握できるようになり、効率化を実現しました。また、同時にトレーサビリティの確保が実現し、受注の増減にもスムーズに対応できるようになりました。

このように、生産実績をみえる化することで、多品種少量生産でもそれぞれの受注の実績把握に手間がかからず、生産と原価の実態を確認でき、効率的な生産活動につながります。

以下の資料ではこの事例をはじめ、多品種少量生産を行う工場に向けた現場改善アイデアをイラスト付きで紹介しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

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