RFIDの交信距離は何で決まるのか?
交信距離の長いRFIDのメリットも解説
RFIDにはさまざまな種類があり、通信方式や出力などによって交信距離が異なります。交信距離の長いRFIDは作業の大幅な効率化や安全性向上などのメリットがありますが、高出力のリーダーは国への利用許可申請が必要という注意点もあります。本記事では、RFIDの交信距離の決定要因や、交信距離の長いRFIDのメリットなどを解説します。
RFIDの交信距離の決定要因
RFIDは情報を記録したRFタグと無線通信を使ってデータをやり取りできる技術です。一括で情報を読み取れるため、在庫管理や物品管理を効率化できるツールとして、製造・物流現場をはじめさまざまなシーンで使用されています。
RFIDの交信距離は、短いもので数mm~50cm程度、長いものでは5~10m程度のものがあり、以下の4つの要因によって決まります。
通信方式
RFIDには「電磁誘導方式」と「電波方式」という2つの通信方式があります。
電磁誘導方式は、電磁コイルのアンテナを用いてリーダーとRFタグの間に磁束を発生させて通信する方式です。電磁誘導方式のRFIDで使用される主な周波数帯は、LF帯(135KHz以下)とHF帯(13.56MHz)です。
LF帯の交信距離は1m程度まであり、非伝導体や水の影響を受けにくいため、スキーゲートのようなレジャー施設や自動倉庫などで利用されています。
HF帯は交信距離が50cm程度までと短いですが、LF帯に比べると薄型化・小型化しやすいことから、カード形状のタグが交通系ICカードシステムや入退出管理などで広く利用されています。
電波方式は、平板なアンテナを用いた放射電磁波により通信を行う方式です。電波方式のRFIDで使用される主な周波数帯はUHF帯(860-960Mhz)とマイクロ波(2.45GHz)です。
UHF帯の交信距離は5~10メートルほどと比較的長く、物流管理や製造物の履歴管理など、物流・製造の現場でよく使われます。
マイクロ波の交信距離は2メートルほどで直進性が高く、物流管理(鉄道コンテナなど)で利用されている例がありますが、UHF帯RFIDの普及により、新規の導入はUHF帯が主流となっています。
RFIDの仕組みやRFタグの分類などの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
アンテナの大きさ
一般的にはRFタグ自体のアンテナが大きいほど電波を効率よく受信でき、交信距離が伸びます。しかし、小型のアンテナでも通信性能や指向性(電波を特定の方向へ照射する能力)が高いものであれば、長い交信距離を確保できます。ただし、指向性が高すぎると、アンテナを向けた先以外からの電波を受信しにくくなるデメリットがあります。
このようにRFタグは、アンテナのサイズが大きければ交信距離が長くなる、小型の方が運用しやすいなどそれぞれのタグによって特徴が異なります。導入環境を踏まえて最適なアンテナのサイズ・形状・性能のRFタグを選定する必要があります。
電波出力の強さ
リーダーの電波出力が強いほど交信距離は長くなり、照射範囲も広がるため広範囲のRFタグを一括で読み取ることが可能です。
反対に、出力が弱いと交信距離は短くなりますが、RFタグへのデータの書き込み時など、他のタグへの干渉を避けるために出力を弱める場合もあります。
なお、250mW超1W以下の高出力のRFIDリーダーを利用する場合には、総務省に電波利用申請を行い、新規申請料や電波利用料を支払う必要があります。
RFIDリーダーの種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
使用環境
RFIDは段ボール箱や樹脂容器の中など障害物を隔てた場所にあるRFタグを読み取ることができますが、金属製の障害物があると金属が電波を反射するため通信が妨げられるおそれがあります。
また、金属製の製品にタグを貼り付ける場合にも読み取りが難しくなることがあるため、注意が必要です。
RFIDが金属の干渉を受けやすい理由やその対処法については、以下の記事で解説しています。
本章ではRFIDの交信距離を決定する4つの要因を解説しましたが、交信距離の長いRFIDにはどのようなメリットがあるのでしょうか。次章で紹介します。
交信距離の長いRFIDのメリット
交信距離の長いRFIDを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
メリット1:業務の大幅な効率化
交信距離の長いRFIDを使用すると、広い範囲にある複数のタグを一度に読み取ることができます。これにより、在庫管理などの作業が迅速化され、手動で一つひとつ確認する必要がなくなることがメリットです。
特に、UHF帯は長距離かつ広範囲の交信が可能であり、読み取り作業の大幅な効率化を実現できます。
メリット2:作業員の安全確保
交信距離の長いRFIDを利用することで、作業員が危険な場所に立ち入ることなく遠隔で在庫や物品の管理ができるようになります。例えば、工場・倉庫内の高所にある物品の情報を遠隔から読み取ることで、脚立やはしごなどを使わずに済むため、転落や転倒などによる労働災害を防ぐことができ、安全性が高まります。
RFIDを活用した安全対策についてはこちらの記事でも解説しています。
メリット3:ロケーション管理の効率化
目当てのモノを探すために浪費している時間は少なくありません。そうしたムダを排除するには、倉庫内の在庫や物品の所在をデータ化して管理する「ロケーション管理」を行うことが効果的です。
ロケーション管理においても、交信距離の長いRFIDを導入することで、在庫や製品の情報を遠距離からまとめて読み取れるため、作業員が特定の場所に移動する時間やタグを探す時間を削減できます。また、製品の置いてある場所や現在位置からの方向などの位置情報を取得することも可能です。こうしたRFIDの特徴により、ロケーション管理の効率化を進められます。
ロケーション管理についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
以上のように交信距離の長いRFIDにはさまざまなメリットがありますが、気を付けなければならないポイントもあります。次章では交信距離の長いRFID使用時の注意点を解説します。
交信距離の長いRFIDを使用する際の注意点
交信距離の長いRFIDは高出力のRFIDリーダーを使用するため、前述したように総務省へ電波利用許可申請をする必要があります。なお、「特定小電力」に分類される250mW以下のRFIDリーダーであれば申請は不要です。
また、技術基準適合試験をクリアしているという証明がされていない(技適マークが付いていない)RFIDリーダーの使用は、電波法違反となるため日本国内では利用できません。電波法では、電波出力が1Wを超えるRFIDリーダーの使用も認められていないため、注意が必要です。
RFIDは適切な交信距離を選ぼう
ここまで解説したように、RFIDリーダーやRFタグにはさまざまな種類があり、リーダーやタグの大きさ、性能、使用環境などによって交信距離が異なることを考慮し、利用したい条件によって使い分けることが重要です。
小林クリエイトでは幅広いRFIDソリューションを提供しており、それぞれの現場の特徴や利用シーンに合わせて最適な提案が可能です。
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また下記の資料では、RFIDの導入効果を高めるために押さえておきたい項目をチェックシート形式で紹介していますので、RFIDに興味のある方はぜひご覧ください。
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