品質向上につながる!
製造業のトレーサビリティ実践法
製造業が事業を展開するうえで重要となるのがトレーサビリティです。この記事では、トレーサビリティの概要から、注目されている背景、さらには具体的な実践法について解説します。自社製品の品質向上や顧客満足度の向上を目指している製造業の担当者、トレーサビリティの効果についてイマイチ理解できていないといったご担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
トレーサビリティとは?
トレーサビリティとは、商品の生産から消費に至るまでの全ての過程を追跡することを意味する言葉です。「trace(追跡)」と「ability(能力)」という2つの言葉を掛け合わせた造語であり、日本語にすると「追跡可能性」と訳すことができます。日本では、自動車メーカーや電子部品メーカー、システム開発会社、食品メーカー、医薬品メーカー、運送業などあらゆる業界がトレーサビリティに取り組んでいます。
2つのトレーサビリティ
トレーサビリティには大きく分けて、「チェーントレーサビリティ」と「内部トレーサビリティ」の2種類があります。
チェーントレーサビリティ
「チェーントレーサビリティ」とは、原材料・部品の調達から製造・出荷・販売まで、サプライチェーン全体の情報が追跡できる状態を指します。チェーントレーサビリティを実現するためには、原材料や部品がどこから来たのか、出荷した製品がどこへいったのかなど、製品に関する履歴が工程や企業を越えてチェーンのように繋がっている必要があります。
一般的に使用されるトレーサビリティは、チェーントレーサビリティに該当します。
サプライチェーン全体の情報を統合的に管理することをサプライチェーン・マネジメント(SCM)と呼びます。SCMとトレーサビリティの関連性については以下の記事で説明しています。
内部トレーサビリティ
「内部トレーサビリティ」とは、特定の工程間や拠点間において情報の追跡が可能な状態を指します。製造業においては、どの部品を仕入れて、どのような工程を経て、どのように管理して出荷に至るのかなどを内部トレーサビリティによって把握します。
では、トレーサビリティに取り組むことによって企業はどのようなメリットが得ることができるのでしょうか。
トレーサビリティを確保することのメリット
トレーサビリティを確保することのメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。
リスク管理の強化
1つ目のメリットとしては、製品に対するリスク管理の強化が挙げられます。トレーサビリティに取り組むことで、自社製品の流通に関する情報はもちろん、製造者や仕入元、販売元などの取引履歴まで詳しく把握できるため、万が一トラブルが発生しても、どの段階でトラブルが起こっているのかといった原因の特定がしやすくなります。速やかにトラブルの原因を特定することにより、問題が大きくなる前に対応策を講じることができるようになります。
品質向上
また、原材料などの調達から製造・出荷・販売まで、全ての過程を把握することが可能になるため、トレーサビリティは製品の品質向上にもつながります。流通の上流や下流だけでなく、中間過程についても把握でき、中間過程の責任の所在が明確になるため、現場の意識向上につながり、結果として品質の向上にもつながると考えられます。
製造業における品質管理について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
顧客満足度の向上
顧客満足度の向上もトレーサビリティの実践によるメリットの1つです。消費者の中には、製品がどのような経路で自分のもとに来ているのか気にしている人も少なくありません。トレーサビリティによって生産元や製造元が明確になれば、消費者は安心感を持って製品を購入することができるので、顧客満足度の向上にもつながります。
また、自社に対する信頼度の向上も期待できます。企業がトレーサビリティを実施することは、安心・安全に対する配慮を行っている証明となるためです。
このように、トレーサビリティの導入は企業に大きなメリットをもたらします。次章では、製造業においてトレーサビリティが注目を集めている理由について解説します。
製造業でトレーサビリティが注目される理由
近年、製造業の中でもトレーサビリティに注目している企業は増加傾向にあります。製造業においてトレーサビリティが注目されている理由は、主に以下の3つです。
万が一のリコールに備えるため
1つ目の理由として挙げられるのが、「万が一のリコールが発生したときに備えるため」です。
自社製品で事故が発生した場合、製品や部品の無償交換を行う「リコール」をする必要があります。リコールを行う場合、対象となる製品がどこにあるのか可能な限り特定することが重要です。トレーサビリティに取り組むことで、対象となる製品を早期に特定しやすくなります。
業務効率化のため
2つ目の理由は、業務効率化につながるためです。
トレーサビリティは、「誰が」「どの過程で」「どれだけ作業したのか」といった作業実績の情報収集にも活用できます。また、納品先の情報も追跡することが可能になるため、購入履歴や顧客情報などのデータを管理しやすくなります。このような業務効率化を目的として、トレーサビリティを導入する企業もみられます。
製造業DX推進のため
DXとは、IoTやAIといったデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを確立することです。製造現場においてDXを実現するためには、サプライチェーン全体を通じてデータを一元管理し、収集したデータをビジネスに活用できる体制を整える必要があります。つまり、トレーサビリティの確保は製造業DXの推進に欠かせない施策の1つともいえます。
製造業DXの概要については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
次章では、製造業においてトレーサビリティを導入する方法を紹介します。
製造業におけるトレーサビリティ実践法
トレーサビリティを実際に導入するためには、RFIDを活用した情報の一元管理が有効です。
RFIDでは、RFタグに記録された情報を、リーダライタやハンディターミナルと呼ばれる機器を使用することで読み取ることが可能です。また、RFIDはバーコードと異なり、汚れに強く、無線が届く範囲内であれば、データの書き込みや読み取りもできるといったメリットがあります。
RFIDの概要については以下の記事で詳しく解説しております。ご興味のある方はあわせてご覧ください。
また、RFIDを活用すれば業務コストを低減することも可能になります。こちらについては事例と共に以下で紹介しております。
では、実際に製造業でRFタグを用いたトレーサビリティを実践するにはどうすればいいのでしょうか。具体的には以下のような形で実践することができます。
ユニークキーを書き込んだRFタグと原材料を生産ラインに流し、生産~出荷までの各過程でRFタグの読み取りを実施します。読み取られたデータは管理用PCへ集約され、集約されたデータからは生産から出荷までの各過程で「いつ・誰が生産し・出荷したか」などの情報を把握することができます。
このような形でトレーサビリティを実施すれば、上流から中間過程を経て下流まで、抜け漏れなく情報を把握することができます。
情報の一元管理でトレーサビリティを実現
今回は、トレーサビリティの概要から導入によって得られる効果、さらには製造業がトレーサビリティを実践する方法などについて解説しました。トレーサビリティを導入することによって、効率的かつ確実な追跡と遡及が可能になります。また、それに伴い業務負荷の低減にもつながるため、業務効率化や従業員満足度の向上にもつながります。
トレーサビリティの実現には情報の一元管理が重要です。IoTやIT技術を活用した情報管理の方法については、以下の資料でも紹介しております。ぜひ以下よりご覧ください。
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